本来は、この資金のことを「基幹産業育成資金」などと呼ばれていた。現在でもいろいろ呼び名はあるが、基本的には財源は、MSA協定の第5条に記された資金であり、MSA協定資金の民間活用枠の部分の資金である。
本来、この資金は基幹産業に対して資金援助するために作られた資金で会った。MSA協定は、日米の相互防衛援助協定であるので、軍事的協定である。当時、共産国の台頭に対抗するために作られた資金であり、極東アジアの防衛資金として基金が作られた。
基幹産業を支えるということは、戦後、多くの日本の基幹産業を支える企業が、空襲などで工場などが破壊され、復旧するには多額の資本が必要になった。また、最先端技術を導入するために、設備投資など国家の産業を復興させるには、多大な資金投資が必要なった。当時の日本経済では、日本一国だけでは、復興するための体力がなく、米国など及び連合国からの支援を受け入れることで、日本の基幹産業を育成したことで、この資金のことを「基幹産業育成資金」などと言われた。
日本の国が世界銀行から借り入れた資金を民間向けに資金を貸し出した。そのうちでも国が、資金の一部を海外で運用して運用益をもって資金の元金の返済などをしたことで、産業の育成を行った。
戦後間のないころ、現在では日本のトップ自動車メーカーであった企業が、倒産の危機で苦しんだ時期があった。その理由としては、戦時中は、トラック製造の需要が非常に高かった。仕事もたくさんあったが、敗戦後、一気にトラックの製造需要がなくなり、自動車メーカーは仕事がなくなった。まさに倒産の危機に陥った。そのとき、メインバンクに資金の融資をお願いしたが、「とても、会社の経営状態をみたら融資することなどできない」と断った。そのとき、国でも自動車産業について論議された。一部の役人は、「乗用車などは、外国製を輸入すればいい。国産の自動車など、大した技術もないし、輸入に頼ればいい」という意見を言うものもいて、救済できないかもしれないということになった、そのとき、地元の銀行などが中心になって、企業の業績に対しては、資金を貸すことができないが、その企業をそこまで作り上げた経営者は、その企業と同等の価値がある。だから、個人信用で大きな資金を貸し出そう。しかし、経営者個人がそんな多額な資金を借り受けても返せる見込みもないので、国が肩代わりして、資金の返済を支援するということで、その自動車メーカーは、存続することができた。
まさに、戦後の経営危機を救った大きな出来事だった。その後、日本の自動車産業は世界に影響を与える大きな産業になった。その資金をうけた企業は、世界一の自動車メーカーなどと言われるようになった。
長年事業を続けているとどうしても、いくら企業が状況に対して対応していても、予想外な大事件というものが起こる。その際に、その企業をなくすことを選択すれば、日本には一つ産業をなくすことにもつながる。
国による償還制度が始まった当時、倒産間際でぎりぎりで資金投入したその自動車メーカーは、国の助けを受けて延命したことで、世界一の企業といわれるまで成長した。
それ以外にも、経営危機で苦しんだ大企業がV字回復した事例は過去には多数あっただろう。長期経済成長の陰で、この償還制度は大いに活用された事実がある。
基幹産業というのは、鉄道、電鉄などを含む重工業などを中心にした製造業企業である。そのような日本を代表する企業の多くは、この資金の支援を得たことは言うまでもない。
かつての昭和の経営者は偉大だった。ある意味、昭和の経営者でカリスマ経営者の多くは、何十兆円という資金が動いたことは事実である。ちょっとやそっとでなくならない資金を持った経営者は、挑戦的なビジネスが可能になることは容易に想像がつくだろう。打つ球が無限にある感覚で商売ができるのである。この資金は、一生に一度だけ受けられるという資金ではない。その資金を受けて、資金を使い切ったら、また申請可能である。日本の有名経営者の中には、数度受け取った人物もいた。
日本にとって東証一部で資本金が100億円を超える製造業の経営者、銀行、信用金庫の代表権のある社員は、その制度を理解して、本当に資金が出せる資金者とつながっていれば、言い方が悪いが、多少経営がうまくなくてもつぶすことがない。製造系企業は、資本金の100倍以上の資金提供を行い。銀行、信用金庫の場合は、預貯金の3倍である。いずれにしろ、1兆円以上で数十兆円という単位で資金が動く。資金の管理権が委託されるわけだ。
また、メガバンクレベルになれば、100兆円以上の資金が動き、毛家者側が正当な理由で資金を希望すれば、300兆円、500兆円という資金まで資金者から委託することができる。不良債権が多少多く出たところでびくともしない仕組みがある。
そんなことをすれば、日本はハイパーインフレになるという人がいるが、日本は、通貨スワップなどで使われていない外貨の予約手形やヨーロッパの運用会社で運用された大型の資金が、国民の予想を超える資金が存在している。すなわち金融市場には存在する金を一般市場に資金を移すだけである。存在していない金を作ったわけでなく、存在して資金であるが、使わず保管している金を市場に移すだけある。
お金はあるが、引き出していない資金が日本には世界で一番あるといっても過言ではない。
その資金の使用権をもっている日本人は、世界で一番幸福な国民であるともいえるだろう。しかし、引き出し方が、償還制度で経済人の個人信用ということで、資金を出すときまっているので、直接資金を受け取れる人は、日本全国に800人から1000人ほどである。
資金不足で、外国に身売りしていった日本の大企業がいるが、資金を求めたが、資金者に連絡するルートが知らなかったり、運が悪い場合には、でたらめな情報を信じたことで失策をした場合があったと聞く。
これも運だろう。窓口が誰で、どこでなにをやっているのか後悔しない。人と人が口を使って話をすることで情報伝達する。資金者から近い人物から聞いた人は、正確な情報をきけるチャンスがあるかもしれないが、中間に何人も何十人もはさめば、全く違う話になっている場合もある。伝言ゲームではじめはなしたことと、最後に話をした人では、話がかわってしまっていることはよくあるが、その現象である。
なかには、うわさだけ聞いて資金者とつながっていないのに、資金の話をして、いざ、話が進みそうになったら、意味不明なことを言って消える人や、ひどい場合には、協力金を出せば、話をつないで見せるということで、金をせびりにくる悪質なものまで現れてくる。だれがやっているか非公開だからカオスな世界になるのである。
しかし、このようないい話は、簡単に聞ければ価値がないので、非公開ということで運のいい経営者だけで会えるという方が、ある意味、システム的には面白いかと思っている。まともに出会えた経営者は幸運だということだ。
外国企業の買収された日本の大企業のすべては、資金者と出会えていない。だから、売られたのである。資金者と出会っていれば、数十兆円の資金を受ければどんなことがあったもつぶれないし売られない。
誰からの紹介でその人の話がどこまで信用できるか、それを判断する力をもつことも経営者としての能力である。
できるかできないかで、天国と地獄が決まる。
資金者側の思いも、救済を求めらえない限り、進んで、救済しますということで資金提供の話を企業経営者に持っていくこともない。資金は、頼まれたときにはじめて資金を出すことになっている。
名刺の裏書に、「よろしくお願いします」の一言が人生をかえる。